眼瞼下垂は進行するだけで自然には戻りません。薬もなく、治す方法は今のところ手術療法のみです。手術療法も何通りかあって、それぞれ長所、短所があります。当院の形成外科では、皮膚側に傷ができ、手術後の出血、腫れは比較的多いものの、しっかりと邪魔をする構造(下記)を取り除き、まぶたを開ける構造を修復する方法をとっています。
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| ◎挙筋前転法 |
後天性眼瞼下垂の手術は、当院では信州大学で開発された「腱膜固定」による挙筋前転法を行っています。これは腱膜を瞼板に重ね合わせて人工的な糸で縫いつけ、下垂症になる前の状態に近づけます。
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| ◎邪魔をする構造の除去について |
電流が電圧と抵抗で決まるのと同じく、まぶたの開き具合は、開く力と抵抗組織の強さで決まります(電気のように簡単なわり算ではありませんが)。この場合の抵抗が、まぶたの脂肪、ほぼ水平に張り付いている靱帯、閉じる筋肉の暴走(眼瞼痙攣)です。これらを治療しないと、まぶたを開けるのに筋力を要します。筋力を使うと(まぶたも身も心も)疲れますし、せっかく眼瞼下垂を治療しても、再発の原因になります。
特に腫れぼったいまぶた、ひとえ、奥ぶたえで細い目をしている人は邪魔な構造が多く、除去する必要があります。そして、最大の抵抗が眼瞼痙攣です。
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| ◎眼瞼痙攣の治療 |
合併する眼瞼痙攣の治療も今は手術を原則としています。ボトックス治療は一時的で、ある程度の力を残しますので、まぶたの筋肉を弱める手術(分断、一部切除、大部分切除など)を行っています。
通常は眼瞼下垂の治療と同時に行います。ただ、痙攣が重症ですべての治療を同時にできない場合は2回以上に分けて行います。
目頭の上の筋肉(特に皺眉筋)の痙攣が体調不良の主な原因となっており、眼瞼下垂が比較的軽く、脂肪と靱帯がそれほど邪魔をしていなそうな場合は、眉の上を切ってこの筋肉の切除だけを行うことがあります。(特にこの部分の麻酔をしてみて明らかに楽になる人)。眉と額の境界を切るため傷跡が目立ちにくく、術後の腫れも少なく、目の形が変化しないのが長所ですが、下垂症の治療と合わせた時ほどは楽にならない可能性があります。
眼瞼下垂・眼瞼痙攣の治療で最も難しいのがこの治療方針の決定です。何と何の治療が必要で、何が必要でないのか、1回で済ませるのか、症状がとれるまで、一つ・二つずつ原因をとっていくのか、患者様が何を望まれているのかを時間をかけて考え、話し合って決定しています。
(最近、近赤外線をあてると皮膚に近い筋肉を萎縮させることができるという発表がありましたが、手術に取って代わるほどの劇的な効果は難しいらしいです。また、筋肉を萎縮させる<副作用のある>薬剤もあります。うまく使えば効果は得られるかもしれませんが、安全で効果的な治療方法はこれから何年もかけて研究していかなければならないでしょう。)
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| ◎治療後の状態について |
瞼はかなり腫れ、出血による色の変化がでて、時には頬にまで広がりますので、しばらくサングラス、メガネなどで隠される患者様がほどんどです(眼瞼痙攣だけを治療した場合は別)。イメージとしては、ボクシングの試合後のまぶたが適当でしょう。ほとんど腫れない人もいれば、視界が悪くなるほど腫れる人(まれですが)もいます。腫れの引く時期も人によってかなり差があって、2週間で違和感がなくなる方もいれば、3ヶ月たっても水が溜まっているように腫れている方もおられます。他、チクチク痛む、周囲(特に目頭の近くや額)がしびれる、ムズムズする。涙や目やにが増える、時々視界の一部にもやがかかる、視力が変化する、などの症状がでることがよくあります。しばらく、完全には目が閉じません。風が当たると目が乾きます。また、眠ると目が開いてきます。人によっては乾燥によって隔膜が傷ついてしまうことがありますので、目用の軟膏を使ったり、目薬で保護してもらったりします。眼科で診療を受けていただくこともあります。ごくまれ(数十人に一人くらい)に、手術中、手術後の出血により、長期間(数ヶ月、今まで全員片側)目の開きが悪い状態が続くことがあります。この場合、少しずつ開いてくるので、待つしかありません。
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| ◎手術の効果について |
症状によって違います。完全に治ってしまうもの、軽減するもの、手術をしても変化のないものがあります。個人差もかなりあります。予定外の追加手術を行うこともあります。
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| ◎再発について |
固定に使う糸は溶けないものを使用しています。しかし、固定される側の瞼板、腱膜は強い力で切れてしまうものです。瞼板が切れて糸が抜けてしまったりすることもあります。先に述べたように邪魔をする構造を取り除けば、かなり再発はしにくくなりますが、眼瞼下垂の予防と同じでまぶたの扱いには術後も注意が必要です。乱暴に扱わなければ、10年や20年は大丈夫だと思います。この手術では再発しても再固定ができます。しかし前回の手術により、瘢痕という不要なコラーゲン組織ができているため、1回目よりは難しくなる可能性があります。
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| ◎美容手術について |
美容目的の手術は行っておりません。また、先に述べたように傷、腫れなど、美容手術としては好まれない方法をとっていますし、構造が根本的に変わるので、望む形態にならないこともあります。病気を治す治療として考えて下さい。
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| ◎手術が危険と考えられる患者様 |
出血が多い手術ですので、心疾患などで、血液をさらさらにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)を飲まれていて、それを休薬できない方は、薬によっては危険ですので、ある程度出血による合併症を覚悟する必要がでてきます。また、肝臓疾患などで極端に血液凝固が悪い方も難しいと考えます。
また、複雑な理論に基づいた治療で合併症もありますので、説明を理解していただけない方には手術をしてはならないと考えております。
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