心臓血管外科22017/11/18

ステントグラフトについて

胸部・腹部大動脈瘤に対するステントグラフトを用いた治療を行っています

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト

 腹部大動脈瘤(お腹の動脈が拡張し瘤状になる病気)に対しては、全身麻酔を行い、お腹を開けて人工血管に取り換える手術が一般的に行われています(図1)。
 この腹部大動脈瘤人工血管置換術は、約60年の歴史があり、どのような動脈瘤に対しても施行可能で、術後長期間の成績は良好ですが、全身麻酔・開腹手術であり身体に対する負担が大きい点が欠点となります。一方、腹部大動脈瘤はお年寄りに多いことが特徴であり、負担の少ない治療法が開発されてきました。その方法がステントグラフトという特殊な人工血管を用いた血管内治療という方法です。日本では2007年より保険適応となりました。

人工血管置換手術

図1

図1

全身麻酔を行い、お腹をあけ(赤い点線)、人工血管で動脈瘤を取り替えます。手術時間は3~4時間、手術後3~4日で食事や歩行が可能となり、術後2週間前後で退院となります。


胸部大動脈瘤に対するステントグラフト

 胸部大動脈瘤に対する人工血管置換術は、胸を切り開く必要があるため、腹部大動脈瘤に比べ大きな手術となります。人工心肺を使用し、胸の傷は大きく術後の痛みも強いため、身体の負担の大きい手術です。
 2008年より胸部大動脈瘤に対するステントグラフトが保険適応となりましたが、腹部に比べステントグラフトの長所が大きい治療法です。当院では2010年9月より企業製のステントグラフトによる治療を行っています。

ステントグラフトによる血管内治療の歴史

 色々な実験的研究の後に、1991年アルゼンチンで腹部大動脈瘤に対するステントグラフトによる治療が初めて行われました。1992年にはアメリカで胸部大動脈瘤に対するステントグラフトによる治療が開始され、1995年には様々な企業がステントグラフトの制作・発売を開始しました。これらのステントグラフトは主に欧米で使用され、1998年にはヨーロッパで、2000年にはアメリカで認可され、広く使用されるようになりました。
 これに対して日本では、1995年に導入されました。当初、健康保険で認められた治療法ではないため、使用するステントグラフトは手作りのものを使用し、治療費も病院負担という状況が長く続きました。2002年に初めてステントグラフトによる治療が保険適応となり、2007年4月より企業製の腹部大動脈瘤用のステントグラフトを用いた治療が保険適応となったため、当院では2007年5月より治療を開始しました。

ステントグラフトによる血管内治療の概要

 ステントグラフトによる血管内治療はどの患者さんに対してもできるわけではありません。動脈瘤の形、場所など多くの制約があり、条件に適した方にのみこの治療ができます。また、患者さんの全身状態を検討し、従来の手術をお勧めする場合もあります。
 使用する腹部のステントグラフトは4機種あり、大動脈に留置する部分と、左右の足への動脈に留置する部分からできています(図2)。
 実際に治療を行う場合、軽い全身麻酔、腰から下の麻酔、または局所麻酔で足の付け根に約4cmの皮膚切開を行い、動脈(大腿動脈といいます)を露出します(図3)。
 この大腿動脈からステントグラフトを内蔵したシースというチューブを大動脈の中に入れます。適切な位置で大動脈内に一つのステントグラフトを留置し(図4)、左右の足への動脈へステントグラフトをつなぐように留置します(図5)。
 通常、2時間程度で手術は終了し、手術翌日から食事・歩行が可能となります。

ステントグラフトの構造

図2

図2

本体と左右の足への脚からできています。
いずれの部分も、太さが4~7mmのシースというチューブに格納されているため、足の付け根の動脈(大腿動脈)から大動脈内へ留置できます。


ステントグラフトの留置方法

図3  図4

図3  図4

まず、左右の足の付け根に約4cmの皮膚切開を加え、大腿動脈を露出します。次に、本体を大動脈内へ留置します。


図5

図5

その後、左右の足への動脈へ、脚の部分をつなぎます。
手術時間は約2時間です。
手術翌日から、食事も歩行も可能で、手術後3日から1週間で退院できます。


ステントグラフトによる治療の利点と欠点

 利点は、身体に対する負担が少ないという点に尽きます。そのため、お年寄りや他の病気(心臓、肺、腎臓の病気など)をお持ちの方にも安全に治療を行うことができます。  欠点は歴史が浅いため、長期間(20年)後の結果が予測できない点です。ステントグラフトと大動脈の隙間や小さな枝から動脈瘤の中へ血液が漏れたり、ステントグラフトが破損する、場所が移動するという事態が生じえることです。そのため、半年または1年毎の定期的な検査が必要になります。  

まとめ

 大動脈瘤に対する通常の外科的人工血管置換術が困難な方に対しても、安全に治療ができるステントグラフトは、治療の選択肢が増えたという点で大きい進歩と思います。この治療法に対し、詳しい説明をご希望の場合は、火曜日・木曜日の午前中に、心臓血管外科の外来を受診してください。

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