松山市民病院では膵臓がんの早期発見を目指した病診連携に取り組んでいます。
膵臓がん早期診断
2022年の国の統計による部位別がん死亡数では、膵臓がんは男性で第4位、女性で第3位でした。また、他のがんと比べて早期発見が難しく、5年相対生存率は8.5%とよくありません。5年生存率を上げるためには“手術が出来る小さな膵がんをいかに早期に発見できるか”がとても重要になります。そのためには、日頃から定期的な採血検査や画像検査をしておく必要があります。
部位別がん死亡数(2022年)
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
男性 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 |
女性 | 大腸 | 肺 | 膵臓 | 乳房 | 胃 |
男女合計 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 |
5大がんと膵臓がんの5年相対生存率(2022年)
膵臓がんはなぜ難治なのか?
膵がんを完全に切除できる可能が高いのは、早期に発見された場合です。膵臓は成人で平均幅3cm,厚さ2cm,長さ15cmの非常に薄い臓器です。また膵がんは悪性度が高く進行が早いため、症状が出た時点ではすでに膵臓外に進行していることが多く、容易に周囲の血管や神経に浸潤し、肝臓や離れたリンパ節に転移し切除不能となっていることが多いためです。
1.膵臓がんの症状
膵臓がんは特異的な症状に乏しいですが、以下のような症状を認める場合は早期の検査を行うことが必要です。
- 腹痛が約40%、黄疸が約15%、腰背部痛や体重減少など。無症状(約4%)。
- 急激な糖尿病発症、2年以内(約半数)。
2.早期診断
10mm以下の膵がんを発見するためには、危険因子を有する患者さんを慎重に経過観察していくことが重要です。
3.危険因子
膵臓がんの危険因子としては、以下のようなものが考えられています。
- 膵がん家族歴
- 糖尿病の新規発症、悪化
- 肥満
- 慢性膵炎
- 喫煙
- 飲酒
- 膵嚢胞(膵管内乳頭粘状液性姓腫瘍:IPMNなど)
【膵臓がんの危険因子】
家族性膵がん(日本膵臓学家族性膵癌レジストリ委員会 2020):家族性膵がん家系とは、親子または兄弟姉妹に2名以上の膵がん患者さんがいる家系です。
4.膵臓がんの診断
早期診断には、定期的は腹部US検査や血液検査で腫瘍マーカー(CEA, CA19-9など)の測定、糖尿病のチェックなどが大切です。
- 腫瘍マーカー:CEA, CA19-9, エラスターゼ1, SPAN-1、DUPAN-2、CA125など。
- 画像診断:腹部US検査、腹部CT検査、MRI検査(MRCP(MRIを使用した磁気共鳴膵胆管造影検査)、PET-CT検査
- 内視鏡検査:ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)、超音波内視鏡(EUS)
- 組織検査:EUS-FNA(超音波内視鏡下針生検)
<CT検査> <超音波内視鏡検査:EUS>
膵臓がん診断アルゴリズム(2020年版 膵癌診療ガイドライン)
<院内検査室>
腹部エコー検査
MRI検査室
超音波内視鏡検査室