整形外科2021/06/15

肩関節のいろいろな病態

肩関節の代表的な疾患

腱板断裂、反復性肩関節脱臼(外傷性、非外傷性)、変形性肩関節症/腱板断裂症性肩関節症、凍結肩(肩関節拘縮)、スポーツ分野では投球障害肩があります。診断は理学所見から疾患を絞り込みエコー、XpCTMRI検査を総合的に評価します。手術方法は、直視下に大きな皮切を用いて手術をしておりましたが、近年は関節鏡というカメラを使用した手術が主流になってきています。皮膚に1cm程の小さい孔を数カ所作成し、そこに手術機械を挿入して組織を切離したり、またアンカーという糸付きビスを骨に差し込み、その糸を利用して断裂した組織を縫合することで低侵襲での手術が可能となってきました。

 

腱板断裂

上腕骨頭に付着する腱板は棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つで構成されており、そのうち棘上筋腱が最も断裂しやすいと言われています。断裂の原因としては、加齢にともなう腱の変性、肩甲骨の一部である肩峰との衝突、外傷などで生じると考えられます。症状は肩関節の動作時痛とともに安静時痛、さらに夜間痛を認めることが多いのが特徴です。理学療法や鎮痛剤の内服、ヒアルロン酸、局所麻酔+ステロイドの関節内注射などの保存療法に抵抗性の場合は手術を行います。手術は関節鏡を使用し皮膚に1cm程の小さい孔を4-5カ所作成し、アンカーを利用して断裂した腱板を上腕骨頭に縫着します(図1)。一次修復が難しい場合(広範囲腱板断裂)は、上方関節包として大腿筋膜から採取した筋膜を移植する上方関節包再建術、肩甲骨から棘下筋を剥離して断裂部に回転移行する棘下筋回転移行術をしております(図2)。また偽性麻痺(腱板断裂伴う可動域制限)を呈し日整会のガイドラインを満たしていれば、リバース型人工肩関節置換術をおこなっております。これは、上腕骨近位端粉砕骨折にも適応があります(図3)


図1 腱板修復後(関節鏡視:アンカーの糸で腱板を上腕骨頭に縫着)

  
図2 上方関節包再建術               図3 リバース型人工肩関節置換術

 

反復性肩関節脱臼

上腕骨頭は関節窩という受け皿の上を動きます。その受け皿から上腕骨頭が逸脱することを脱臼といいますが、これは上腕骨頭を関節窩上に制動している関節包靭帯が損傷することで生じます(バンカート損傷)。その際に関節窩前下方と上腕骨頭後方が衝突することで、関節窩の骨欠損や摩耗(骨性バンカート損傷)、上腕骨頭後方の骨欠損(Hill-Sachs損傷)が生じます。前下方へ脱臼することがほとんどです。再脱臼を繰り返す症例には、関節鏡を使用して皮膚に1cm程の小さい孔を3-4カ所作成し、アンカーを利用して関節包靭帯を関節窩に縫合します。骨性バンカート損傷やHill-Sachs損傷が大きい症例など再脱臼リスクが高い症例やコンタクトスポーツの症例には、Hill-Sachs損傷部に棘下筋を補填するRemplissage法(図4)や烏口突起を移行するBristow変法をおこなっています(図5)

 
図4 バンカート修復術、Remplissage法


図5 Bristow変法

 

凍結肩(肩関節拘縮)

肩関節の関節包や関節周囲組織が固くなり可動域制限や肩関節痛が出現します。原因不明の特発性のものから、続発性のものまであります。凍結肩発症のリスクファクターは、高齢、女性、糖尿病・甲状腺疾患・高脂血症などが報告されています。この症状は発症から2年ほどで正常な肩関節に改善するという報告がある一方で、平均7年経過しても症状が残存するという報告もあり日常生活に支障がでることが多いです。治療法は、手術室で全身麻酔下に非観血的肩関節授動術(徒手の力のみで肩関節を他動的に強制して動かし関節包を裂く方法)や鏡視肩関節授動術(関節鏡を用いて肩関節内に手術機械を挿入し関節包を切離する方法)(6)が主流でした。現在は、外来でエコー下に斜角筋ブロック(頸部第5, 6神経根ブロック)下に非観血的肩関節授動術(サイレントマニピュレーション)を行う方法もあります(図7; a, b)。これは日帰り可能で入院の必要もなく手術と比較して安価で医療費の節約が可能です。


図6 鏡視肩関節授動術

 (a)超音波ガイド下C5, C6ブロック              (b)ブロック後の非観血的肩関節授動術
                                                                              (サイレントマニピュレーション)の手技

図7 超音波ガイド下C5, C6ブロック下の非観血的肩関節授動術(サイレントマニピュレーション)

 

投球障害肩 

投球動作は足→膝→股→脊椎→肩→肘→手の連動した全身運動です。そのため足→膝→股→脊椎のどこかに障害が生じると肩や肘に過負荷が生じます。このようなコンディション不良の状態で繰り返し投球動作を行うことによって肩関節痛や肘関節痛が出現し投球困難となります。治療法としては、全身コンディションをチェックして硬くなっている部位のストレッチや筋力トレーニングを指導します。理学療法を行って全身のコンディション不良が改善したにもかかわらず肩関節痛が改善せず、器質的疾患がある場合には関節鏡による手術を行います。

肩関節外来

毎週金曜日の午後に肩専門外来をさせて頂いております。火曜日、水曜日の午前中にも外来をしておりますので、肩関節でお困りの方はどちらかの曜日にご相談ください。

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