外科2017/11/24

虫垂炎について

【虫垂炎の症状】

 虫垂炎は消化器外科では胆石と並び最もありふれた疾患です。盲腸の先端にある虫垂が炎症を起こしたもので、俗に「盲腸(炎)」と言われているものです。小児から高齢者まですべての年齢に発症しますが、10~20歳代に多くみられます。初めは胃のあたりの痛みとして感じ次第に右下腹の痛みに変わってくるのが典型的ですが、初めから右下腹痛や腰痛のこともあります。吐き気や嘔吐、発熱、軟便を伴うこともあります。ひどくなると歩いたり動いたりしたときの痛みが強くなります。腹膜炎を疑わせる症状です。

 さらに進むと、虫垂が破れて穿孔性虫垂炎となり、周囲に膿がたまったり(膿瘍)、腹全体に広がると汎発性腹膜炎となって命にかかわる状態になります。特に小児や高齢者では症状をうまく訴えられず重症化することがあるので注意が必要です。

【虫垂炎の診断】

 症状と腹部所見で多くは診断できますが、ほかの疾患と区別をつけ、炎症の程度を把握するため、血液検査、腹部CT検査を行います。小児ではCTよりも腹部エコー(超音波)検査が優先されます。

【虫垂炎の治療】

保存的治療

手術をせず、絶食・輸液・安静・抗菌薬等による治療です。俗に「ちらす」と言われる治療です。重い持病がなく、症状や腹部の所見、検査結果が軽いときに選択されます。入院が必要なことが多く、一週間程度かかることもあります。治療してもよくならなければ手術が必要となり、その場合は治療開始の時よりも手術が難しくなります、また、一旦よくなっても再発することもありその頻度は30%程度と言われていますので、選択に苦慮するところです。

手術(虫垂切除術)

以前は少しでも腹膜炎の所見があれば夜中でも緊急手術を行っていましたが、汎発性腹膜炎でなければ一両日待って、十分な検査や準備をしてから手術をするのが一般的です。

 右下腹部を数㎝切って行う開腹術が標準でしたが、現在では腹腔鏡下手術がほとんどになりました。術後の痛みが少ないことだけでなく、腹腔(腹の中)全体が観察でき、十分な洗浄ができるメリットは大きいです。全身麻酔が安全にかけられるようになったことも一因です。術後経過が良ければ3~5日で退院する方がほとんどです。

 「待機的虫垂切除」も最近では選択されることがあります。虫垂の炎症が強くてもまた穿孔して膿がたまっていても周囲の脂肪組織などで被われて腫瘤となり、汎発性腹膜炎や腸閉塞を起こしておらず全身状態が良い場合、一旦保存的治療を行い、炎症が軽くなる2~5ヵ月待ってから手術を行います。その方が傷の化膿などの手術合併症が少ないとの研究結果に基づく考え方です。

 まれですが、術後の病理組織学的検査(顕微鏡による検査)で初めて虫垂癌と分かることがあり、その場合は広範囲に切除する再手術が必要となることがあります。高齢の方の症状の軽い虫垂炎は要注意です。

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