1.はじめに
急速に進む高齢化社会において, 2050年には75歳以上の人口割合が21.5%になるといわれています。それに伴う高齢者の転倒割合も徐々に増加傾向となっています。当院では、病院内での転倒を可能な限り予防していくことを目的に、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・薬剤師・管理栄養士などの多職種により構成された転倒予防対策チームを結成し、院内の転倒予防に取り組んでいます。患者さん個々の状況や院内環境を含めて専門的見地から多職種で連携を取り、具体的な予防対策をすすめています。
目標と目的
当院における転倒事故を防止し、転倒に関する安全管理を討議・検討しその効果的な推進を図る
業務内容
- 当院での転倒に関する報告、分析、対策
- 転倒の恐れのある患者、家族に対しての教育
- 職員に対する転倒防止の指導・啓蒙活動
転倒予防対策チーム構成人員
医師 | 1名 | 医療安全管理者 | 1名 |
---|---|---|---|
看護師 | 15名 | 理学療法士 | 3名 |
薬剤師 | 2名 | 作業療法士 | 1名 |
管理栄養士 | 1名 |
2.転倒転落の状況
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- 男性がやや多い
- 入院後2日目をピークに5日目までが多いようです
- 下肢の筋力や薬剤に よるものが多い
- 消灯前や朝方の トイレが関係している
3.具体的活動
入院されてから対策までの流れ
4.転倒ラウンド5つのステップ
5.転倒予防対策チームの活動
チームでの活動
・転倒予防対策委員会(1回/月)
・転倒ラウンド
・ポスター作製・掲示
・転倒予防対策ビデオ
・離床センサー管理
・医師・看護師意識調査実施(1回/年)
・研究班の設置
・院内危険場所の改善・不備車椅子などの指摘・改善
・トランスファー技術勉強会
・医療安全院内研修発表
・医療安全委員会連携
・各学会発表
・雑誌執筆
・転倒予防に関するシンポジウム参加・発表
・医療安全に関連した研修会の講演(出講)
・施設見学受け入れ
主治医の活動
・転倒の危険性と対策の必要性の、患者本人と家族への説明と同意
・患者情報の把握
・各科専門医への院内紹介
・薬剤師への服薬指導依頼
・リハビリへの評価依頼
看護部の活動
・転倒・転落アセスメントスコアシート評価
・危険度別対策実施
・看護計画立案(危険度2,3)
・パンフレット表示
・転倒予防対策チームカンファレンス
・転倒ラウンド
・患者・家族への説明と注意喚起
管理栄養士の活動
・転倒予防対策チームカンファレンス
・転倒ラウンド
・NST連携
理学療法士の活動
・転倒予防対策チームの事務局
・転倒ラウンド時のPT評価
・リハビリオーダー後のPT評価・治療
・トランスファー勉強会
作業療法士の活動
・環境チェック
・転倒ラウンド時の環境調整
・靴に対する意識改革
・サービス委員会連携
薬剤師の活動
・転倒を起こしやすい薬剤に関する情報提供
・転倒ラウンドへの参加、服用薬剤の評価
・睡眠導入薬服用人数と転倒割合の調査
・服薬指導
6.おわりに
私たちが行っている“多職種が協働して転倒リスクを減少させていく”という姿勢はとても大事なことですが,それでも病院内で起こる転倒はゼロにはなりません。重要なのは患者・家族様のご協力もあってこそ成り立つものであると認識しています。
病院全体で取り組む姿勢,医療安全におけるチーム医療として,まず医療者が認識を一つにすること,また患者・家族様にも協力を呼びかけながら,安全・安心である入院生活を送て頂けるよう努力してまいります。
松山市民病院 転倒予防対策チームへのお問い合わせ