The hospital of the people, by the people, for the people ―病院経営改革へ向けて―

理事長 山本 祐司
一般財団法人永頼会 松山市民病院
理事長 山本 祐司
「ポスト・コロナ」の時代となっても再びインフルエンザが流行し、手洗い・うがい・マスクの励行や学級閉鎖などによる感染対応が常態化しました。愛媛・松山医療圏にお住まいの皆さん、医療・福祉関係の諸機関・施設等の皆さんには、日頃より永頼会松山市民病院との連携・交流をいただき心より感謝申し上げます。
昨年2025年の世界と日本のイベントを振り返ってみました。損得勘定ばかりのトランプ関税、コメ価格高騰と備蓄米放出、大阪・関西万博の黒字閉幕、日本初の女性総理大臣誕生、クマ被害急増。明るいニュースでは、米国メジャーリーグや世界陸上ほか各スポーツ界での日本人選手の活躍、前年のノーベル平和賞に続き生理学・医学賞と化学賞の日本人ダブル受賞―それぞれ坂口志文先生の「一つ一つ」、北川進先生の「無用の用」の言葉が印象的でした。日本の世界平和への願いと科学レベル向上への貢献が評価された一連の受賞でした。一方、ウクライナ・ロシア戦争、イスラエル・ハマス紛争など世界各地で懸念される地政学リスクは続き、日本は戦後80年(昭和100年)の節目の年であっただけに、高市総理の台湾有事発言はチャイナ・リスクを浮き彫りにし、経済面や文化交流面でのマイナスをもたらしました。
さて、医療界では、物価高が続く中、診療報酬は公定価格であるため価格転嫁できず、多くの医療機関、特に病院は赤字に転落し、病院医療の持続可能性に暗雲が立ち込めております。2026年度4月の改定率は、診療報酬「本体」が30年ぶりの3.09%増、「薬価」が0.87%減で、全体として12年ぶりの2.22%増の「プラス改定」となりました。政府として医療機関の経営基盤の強化に配慮したつもりでしょうが、物価・人件費上昇を補填しきれず依然厳しい状況は続くとみられます。
当院は、昨年10月、外来調剤を「院外処方」とすることで病院の薬品費用負担を減らしました。他方、院内薬剤師業務やチーム医療の更なる質向上と成果を得るべく、経営改革を進めております。地域連携室機能を強化し、例えば高齢者のcommon disease, common injuryにてセルフケアが困難な患者さんを幅広く受け入れ、入院診療+リハビリテーションにてサルコペニアに陥るのを防ぎ、連携医療機関や施設へのスムースな転院・退院調整を行えるよう入退院コントロールに努めます。救急当番日の入院患者数のオーバーフロー状態もいとわない覚悟で臨まなければ収益確保につながらないと思われます。
また、病棟再編や急性期のリハビリ充実など、患者数に応じた職員配置で良質かつ効果的な業務体制を再構築します。チームリーダー主導による職員間の対話促進によりモチベーションを維持しながら、具体的な目標設定を期限内にクリヤーすべく一丸となって前進する決意であります。そのため、副院長の権限を強化し、経営と臨床のバランスをとり、経営統括責任を担う体制づくりに着手致しました。医師・看護師・技術職・事務職員など各部署職員の一人ひとりが「自分たちが経営を支えている」という意識を持つことが、改革へのエネルギーとなります。
松山市民病院は、「The hospital of the people, by the people, for the people」を理念に掲げ、今年で創立70周年を迎えます。また、儒教古典の「書経」からの一節「萬世永頼(ばんせいえいらい)」、すなわち「永遠の信頼(Lierre、リエール)」に因んだ「永頼会」を財団法人名としており、地域の人々の信頼に応える病院医療の持続可能性を追求しております。
今年は、丙午(ひのえうま)の迷信をポジティブにとらえて、女性が多い職場での職員一人ひとりの「炎が燃えるような」エネルギーを病院全体のパワー(特にソフトパワー)へと展開し、経営改革に取り組みたいと思います。永頼会松山市民病院とのご交誼をよろしくお願い申し上げます。

