形成外科2017/11/21

眼瞼下垂について 後天性眼瞼下垂・眼瞼痙攣の治療

当院での眼瞼下垂症の手術

1.腱膜性(後天性)眼瞼下垂症

腱膜固定法という挙筋前転術の一つの方法を行っています。

挙筋腱膜が瞼板から離れてしまうのが原因ですから、これを探し出して、引きずり出し、瞼板に糸で縫い付けます。つまり、位置を生まれた時の状態に戻すわけです。これとともに必要なことは、まぶたを持ち上げるのに邪魔(抵抗)している組織を切ってしまうことです。これによっていっそうまぶたの動きが軽くなり、症状がとれやすくなるのです。

 

2.眼瞼痙攣を合併している腱膜性眼瞼下垂症

ミュラー筋を瞼板からはがして小さな隙間を作る作業を追加します。眼瞼痙攣になっている人は、ミュラー筋がかなり鍛えられてしまっています。腱膜を固定することで、ミュラー筋が働く必要性はなくなるのですが、鍛えられた筋肉はやはり知覚受容器を刺激してしまいます。目だけ大きくなって痙攣がとれず症状もそのままということがおこりやすいので、眼瞼痙攣を合併している場合、これは必要な操作と考えています。
これを追加しなかったころの手術結果と比べると圧倒的に症状のとれる率、程度が高くなっています。脳への刺激が減って日中眠くなる、集中力が弱くなるかもしれないという有害な現象も考えられなくはないのですが、夜間の睡眠が深くなるために、眠気もずっと楽になっているようです。敏感すぎる知覚受容器を鈍感にすると意味の英語の略をADMとして形成外科医の中で使われています。たいした症状がない(受容器が敏感でない)人にこの手術をしてしまうと有害だと思われます。

時々ネット掲示板・ブログなどで、ADM手術で悪い結果になったと書き込まれているので、追加しないでほしいと手術前に言われることがあります。条件が悪かった場合(すでに複数回手術を受けていた場合など)、手術の違い(細かいところは術者によって違う)、もともと症状が軽微だった患者さんで、結果が思わしくないこともあったのかもしれません。しかし、たくさん学会に出席していますが、有害事象としてまとめた報告は聞いたことがありません。ネット掲示板は匿名の人が好き勝手に書いているということも考えて判断してみてください(なぜかADM手術は実際とかけ離れて悪く書かれている)。

 

3.習慣で眉間にしわを寄せる人に発生する眼瞼痙攣

眉間にしわをよせると知覚受容器を刺激してしまいます。習慣になっていたり、重症になって上記の治療をしても、十分に知覚受容器にかかる負荷が取れない場合は、これらの原因となっている筋肉の処置が必要になります。現在、一般的なのはボツリヌス菌の毒素の注射による筋肉麻痺をつくることです。しかし、根治性はほとんどなく、継続して続けなければならなく、副作用もしばしばあることから、当院では原因の筋肉を離断や切除しています。

 

4.下まぶた(下眼瞼)に原因がある眼瞼痙攣、開瞼失行

下まぶたにもミュラー筋があり、その中に知覚受容器があります(「眼瞼下垂とは」の開瞼失行に詳細があります)。ここからの信号が強くなるとまつ毛の近くの眼輪筋の収縮が強くなること、信号が強くなりすぎると、目を開けにくくなったり、活動中も眠くなったり、顔の下の方に痙攣が起こることがあるという現象です。

上まぶたのADM手術のように、下まぶたのミュラー筋を離断して緩めるだけでは効果は薄いようです。眼球の重みなども刺激をしてしまっているかもしれません。現在はミュラー筋も知覚受容器もできるだけ切除してしまう治療が効果的とされています。当施設では重症の方のみに行っています。

 

診療の実際

予約

水曜日と金曜日の午後に外来診察を行っています(時間に余裕があれば別の曜日、時間もあり)が、完全予約制です。診察、治療を希望されるかたはまず、外来受診を予約してください。来院可能な日程の候補をご用意いただき、外来診察時間にお電話(089-943-1151)をください。交換員が出ますので「形成外科の眼瞼下垂診察予約を」とおっしゃってください。外来の担当が出ます。「明日どうぞ」ということもあれば、1ヶ月以上先にならないと予約できないこともあります。

外来診察

印刷可能なら予診表(形成外科予診表、眼瞼下垂の予診表)をお書きの上、お持ちください。また、できるだけ、過去の写真をお持ちください。実は先天性下垂だったりすることがあり、その場合は特に小児期の写真が手がかりになります。その他にも写真が治療を行う際の注意点を教えてくれることがあります。
患者さんの状態にもよりますが、診察から説明まで、1時間程度かかることもあります。そこで手術を希望されれば、手術の予約を行います。治療を受けられるのを迷われたり、日程が決められない場合は予約せずお帰りいただき、後日お電話で予約を入れることも可能です。眼瞼の手術は通常、水曜日と金曜日の午前に行います。月曜日、木曜日の午後も手術枠ですが、眼瞼以外の手術優先ですので、寸前にならないと予定を入れられないこともあります。いずれにしても、手術予定日の1週間~1ヶ月くらい前に手術前に必要な検査を行います(外来診察と手術日が近ければ診察直後に検査していただくこともあります)。

手術日

午前手術は8:30ごろに来院していただき、外来から直接手術室へのご案内となります。午後手術は午前10:00ごろに入院していただき、病室から手術室へのご案内となります。遠方のかたで上記の来院が難しい場合は手術予約時に相談ということになります。

手術のあらまし

点滴を入れ、切開するラインを描き、局所麻酔を眼瞼に注射し、手術を行います。時々目を開けていただくために沈静薬、睡眠薬は使いません。時間は上記の①で1時間半程度、組み合わせ次第では2時間を超える場合もあります。痛みは多少(個人差が大きい)あり、まぶしく、目元を触られるのでうっとうしいです。健康になるためと思って耐えてください。こちらも精神集中フルスロットルで手術させていただきますので。

術後

術後はジワジワとした出血が止まるまでの安静と冷却が大切です。眼瞼手術後の安静とは基本、目を開けないことなので、入院を必要とします。また、術後出血というリスクがあります。これが自宅でおきると病院に来られるまでつらいことになります。このリスクは術後日が経つにつれて減りますので遠方のかた、血管が弱い/血を固まらないようにする治療をうけられているかたは長めに入院されたほうが安心できるでしょう。通常、市内のかたで1~2泊、県内市外のかたは2~3泊、県外のかたはそれ以上ですが、7泊を超えての入院は難しいです。抜糸は7~14日後、腫れ具合や来院可能な日を考慮して行います。
経過観察は半年くらい行います。抜糸の時、具合が良さそうなら「次、半年後に」ということもありますし、投薬が必要な時など1月毎ということもあります。

合併症

腫れ、出血斑(アオジ、アオタン)、周囲の知覚障害、傷跡や凹凸など見た目の問題、しばらくの目の乾き、視力の変化などがあります。術式や患者さんの全身状態やまぶたの構造次第で合併症の起こり具合は違います。診察時にもう少し丁寧にお話いたします。

治療効果

これは本当に様々です。全例改善とはなかなかいかず、期待通りの効果が得られないこともあります。一方で劇的に改善するなどということもあります。効果が現れるのも、術中のこともありますし、1年以上経過してからなどということもあります。同じような状態のかたを同じように手術しても全然結果が違うことがあるので、当方も驚かされたり悩んだりします。やはり脳を経由するから複雑なのでしょう・・・。

治療費用

健康保険適応、3割負担で1~2泊の入院で手術費用込みで6~7万円くらいです。入院が長くなると1泊5千円ずつくらいご負担が増えます。個室の場合もご負担が増えます。

「眼瞼下垂について」リンク

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