形成外科2017/11/21

眼瞼下垂について みなさまに知ってほしいこと

私がこの治療に力を入れている理由

私が眼瞼下垂の治療を始めたきっかけは、職場にひどい頭痛持ちの方がいて、悩んでいたことです。学会で眼瞼下垂が頭痛の原因であると聞いていたので、この方を治療するために一度勉強に行こうと、信州大学へ外来・手術の見学に行きました。3例松尾教授の手術を見せていただきました。ビデオも持ち帰り、何度も繰り返し見ました。
 
重症の患者さんから治療を始めましたが、想像以上に手術の効果がある。手術翌日に「何十年もとれなかった肩こりがない!」とか「夜が明けた」「私は生きている」などの声があるとやる気がでてくるものです。少しずつ症例を増やしていくと一つ問題がでてきました。結構神経を使う手術なのですが、術後に自分に頭痛が起こるのです。実は、月に2回ぐらいの頻度で私にも片頭痛がおきていたのですが、その頻度が手術をするたびと増えたのです。夜中、激しくのたうち回った私は信州大学に連絡をして、たまたま空いていた枠(?)に入れていただいて手術を受けました(痛みは多少ありましたが、胃カメラよりも楽でした)。私も翌日から体の余計な力が抜け、心身共に軽くなりました。頭痛もなくなり、眠りもよくなりました。自分で治療効果を実感したわけです。

これが、私がこの治療に力を入れている理由です。少しでも多くの方のつらさをとる。生き甲斐にもなるわけです。
今のところ、眼瞼痙攣は手術料が保険で算定されません。眼瞼下垂症の手術に無料サービスとして追加するわけです。眼瞼下垂の手術なら両目1時間余りで済むところ、痙攣の手術も行うと倍以上かかることもあります。無理な格好で手術をするので、後で腰が痛くなることも多いです。それでも、少しでも自分が得られた「楽な体」になっていただきたいので、必要だと思うことは全部するという方針で治療に取り組んでいるわけです。

手術前後の写真

よく患者さんから手術を受けた人の写真を見たいと言われます。しかし、写真を供覧するにはご本人の承諾を得なければなりません。「構わない」とおっしゃってくれる方もおられますが、実はできれば人目にさらされたくないとお思いかもしれませんので、原則お見せしていません。
ですが、腫れるといってもどれくらいか予想をつけたいでしょうから、私自身が手術を受けたときの写真を参考にしてください(7.私がこの治療に力を入れている理由へ)。ただし、まぶたの状態によって、これより手術操作が多かったり、少なかったりしますし、年齢、体質等によっても腫れ具合は違います。
たくさんの手術症例の中で、私の場合は腫れ具合はやや軽度、腫れの引きはかなり早いほうだと思います。

眼瞼下垂に関する知識が広がらない理由

様々な体調不良を引き起こす眼瞼下垂・眼瞼痙攣ですが、医療業界でさえ知識が広まっていません。その理由を考えてみました。

おおむねこの6点です。

  1. 研究された歴史がまだ浅い
  2. コペルニクス的転回は理解されるのに年月を要する
  3. 治療成績がまちまち
  4. 未病という概念
  5. わかりにくい眼瞼下垂
  6. 決定的証拠がない、脳や心が関わってくる

1.研究された歴史がまだ浅い

「眼瞼下垂症を手術したら頭痛が治った」という患者さんたちが多くおられて、その理由を研究したら脳幹、自律神経を眼瞼にある裏の神経がコントロールしていると推測されてから十数年程度しか時を経ていません。形成外科の学会で発表はされてきましたが、まだまだ頭痛を研究する方たちなどには理解されていない状態です。医学の教科書にも載ってないので当然医学生(信州大学以外の)は習いません。つまり、まだ医療関係者もほとんど知らないのです。

2.コペルニクス的転回は理解されるのに年月を要する。

今まで常識とされたことをひっくり返すような発表を「コペルニクス的転回」と言いますが、これは理解されるどころか迫害を受けることがあります。例えばそのコペルニクスは「天動説」を信じ込んでいる人からの迫害を恐れ、「地動説」の発表を死後にしてもらいました。地動説を吹聴したガリレオが迫害されたのは有名ですよね。
今の医学は脳が体の神経を全て司るという考えです。瞼ごときの故障が脳に悪影響を及ぼすとはまじめに考えてもらえないのです。「心の不調、自律神経失調の重大な原因を発見」などノーベル医学生理学賞に選ばれてもいいような研究であると思うのですが、科学雑誌には雑誌の評価者が理解できないから掲載されないようです。この知識が広まるのはいつのことやら・・。
形成外科学会には生理学の研究者/興味を持つ人すらほとんどいませんし、とにかく機序を理解することが難しい。学会の重鎮から信州大学の先生への挨拶は「あんたのところの発表はさっぱりわからん」なのです。

3.治療成績がまちまち

もし、眼瞼下垂の手術を行って100%の患者さんの頭痛、心の不調が完全に治ればもっと評判も広がったでしょう。問題は眼瞼下垂に対する術式が多くあり、施設ごと、術者ごとに大きな違いがあります。そもそも、開瞼障害のみを治すのか、いろいろな症状も治すのかということで術式が違ってきますし、患者さんのまぶたの構造によっても違ってくるべきなのですが、一律で同じ術式を行われることも多いのです。眼瞼痙攣を伴うかどうか、まぶたに靭帯性の抵抗組織があるかどうか、ミュラー筋の状態がどうなっているか、これらを十分評価せずに手術を行うと、たまたま条件があった患者さんしか調子が良くならないのです。期待を裏切られた患者さんが多いというのが、この治療が広まらない一つの理由と思われます。ただし、十分評価した上で治療すれば成績は100%になるかと問われればそれは「いいえ」になってしまいます。例えば痙攣を起こしている筋肉は100%除去してしまうと合併症(目が閉じられなくなる)が必発であるため不可能ですし、長期の罹患、薬剤の使用などで脳幹などに不可逆的な変化が起きてしまっていると考えられる方もおられるからです(脳幹には手が出せません)。まだまだ発見されていない小さな原因もあるかもしれませんし。

4.未病という概念

頭痛持ちや肩こりなどは、「未病」などと言われ、病気として扱ってもらえないことが多くあります。本人は生活に支障が出るほど苦しんでいるのに、「肩こりなんて誰にでもある」と、軽い症状を持っている人に他のひとと同様の軽い障害と考えられてしまう。それどころか、精神的な面から起きていると言われてしまったりする。もし、生命に係わる重い病となれば、研究もされるでしょうし、真剣に考えてもらえます。それが「未病」つまり病気以前の状態と評価されるところに知識の広まりに対する障害、ひいては患者さんの不幸があります。

5.わかりにくい眼瞼下垂・眼瞼痙攣

 見た目では眼瞼下垂・眼瞼痙攣はわかりにくいことが多いです。つまり、症状はあっても「目が開いているから眼瞼下垂以外に原因があるだろう」「痙攣なんてしてないじゃないか」と判断されてしまうのです。これらの見分け方は別のページに載せていますが、一般には知られていないので、判断もされないのです。

6.決定的証拠がない

 状況証拠は信州大学から多く発表されています。例えば、動物実験で瞼の神経に染料を染み込ませると「夢を見る中枢」と言われる脳幹の青斑核が染まるという発表がありました。
まぶたの状態と、自律神経の指標である「手の発汗量」の測定、脳血流の測定など、『仮定』を裏付ける『証拠』はたくさんありますが、直接人の脳に電極を突っ込んで計測するなんてことは当然ながらできません。いくら状況証拠を発表しても『理解したくない人』に「他の経路かもしれないだろ」と言われてしまうのです。
日常的に誰もが実感できる状況証拠を述べます。
真っ暗な部屋で寝ていて、物音で目が覚めたとします。目をしっかり開くのと半分つぶった状態とでどちらがまた、眠くなるでしょう?これは、まぶたのセンサーからの信号が大脳を刺激する状況証拠です。眠いけど、起きていようとする子供はやたらにまぶたをこすります。これもそうです。
重いものを持ち上げるとき、眉間に皺を寄せて、歯を喰いしばります。これらは、まぶた、歯の根っこのセンサーから脳を経由し、自律神経(交感神経)を興奮させるためです。
いろいろな状況証拠がありますが、信号が心の入った脳を経由するために話が難しくなってしまうのです。「心」を客観的に数値で評価する方法もないですし、様々な要素が「心」に影響してしまいますから、これからも決定的な「物的証拠」はでてこないでしょう。

眼瞼下垂Q&A

Q.そもそもなぜ後天性眼瞼下垂になるのか?

A.「神のみぞ知る」と言ったところでしょうか。

ただ、生物の構造がその一生に適したものになるように進化してきたとするのであれば、「①子供の頃は親の世話になりながら力を入れずに成長し、②大人になれば、脳、体ともに活動性を増し、③老人になれば活動性を下げて弱った体をいたわる」ために、まぶたの裏から脳を刺激する感覚は①→②眼瞼下垂がある程度は進むにつれて増加し、②→③その程度を超えると減少する。このためにあえて、まぶたの支持組織とまぶたを上げる筋肉の結合は弱くなっているのではないでしょうか?
ですが、皆が同じように程よく年をとっていくのでなく、活動性よりも障害ばかりが増えてしまったり、個人の許容量を越えて活動的になってしまったり、活動性をうまく利用できる環境でなかったり、人より早く成人化や老化が進んでしまったりして、病気として発症してしまうのでしょう。

Q.眼瞼下垂の予防方法は?

A.まぶたを極力触らないということにつきます。

かゆければ、目薬などでかゆみをとる。汗、涙をゴシゴシふかない。コンタクトレンズは必要最小限に、必要なら取り外しは下まぶたを軽く引くだけで、特にハードコンタクトはスポイトではずす。化粧、エクステなども必要以上にしない、などです。

Q.自然治癒は起こる?

A.瞼下垂そのものについては自然な修復機転はないです。

症状については、脳の疲労状況が影響しますので、脳をうまく休ませることができれば改善もありえますし、眼瞼下垂がさらに進行することで、逆に力が抜ける状態になればなくなる症状もあります。

Q.手遅れになることは?

A.眼瞼下垂だけに関して言うと手遅れはないと思います。

ただ、合併する痙攣が重症化すると治せないことも増えてくるので、「早く治療していればもっと結果がよかったかも」ということはしばしばあります。特に抗不安薬などによる薬剤性眼瞼痙攣は服用期間が鍵になりますし、非常に治療に抵抗すると言われています。

Q.薬剤性眼瞼痙攣はどんな薬でおこる?

A.検索エンジンで検索をかけてみてください。

どんどん新しい情報がでてきています。

Q.眼瞼下垂手術を他院で受けましたが良くならない。やり直しは可能か?

A.受けられた手術の術式、剥離された範囲、癒着の程度、取り除かれた組織の量などによって、可能、不可能があります。

比較的簡単な術式であれば、やり直し手術もそう難しくないことが多いです。ミュラータッキングや腱膜固定術のやり直しも簡単ではありませんが、可能なことはさせていただいています。結膜側からの挙筋短縮術の術後は、ミュラー筋の深部に糸がかけられた場合、正直うまく再手術する自信がありません。修復していい状態に戻したはずでも、症状はやはり残るということもしばしばあります。
もし、やり直し手術を希望される方は、どんな手術をうけられたかの情報をできるだけ得てください。「挙筋前転法を受けました」だけでは、いろいろな術式があって、やり直しができるかわからないのです。できれば、手術記録をもらうか、紹介状をもらってきてください。もし、遠方から来院されるなら、診察予約のお電話をいただくときにその情報を話していただくか、ファックスしていただくなどで、やり直しの可否をお話できるかもしれません。

Q.症状はホルモンの影響だと聞いていたが?

A.ホルモンバランスは当然影響します。

いろいろな状況が体調に影響すると考えます。眼瞼疾患はそのたくさんの要因の中の大きな一つと考えましょう。

Q.症状は脳内のヒスタミン、GABAも影響する?

A.影響すると考えています。

特に脳内GABAの不足はまぶたを閉じる力を増強するという話を聞いたことがあります。かといって、GABAを摂取したからといって脳内の必要なところにとりこまれるかどうかはわかりませんし、体にいろいろな悪さをするヒスタミンは摂取できません。

Q.このホームページの理論が信じられないが、間違いないのか?

A.この理論は数多くの状況証拠によって成り立っています。

私たちはこの理論を信じて治療を行い、その効果で確信を持っております。完璧な物的証拠を得るには脳・神経の細胞間の信号の流れを証明せねばなりません。信じないと言われればそれまでです。

Q.まぶたがある程度開いている状態で保険診療で治療するのはおかしいのではないか? 

A.この意見は医師からもよく出される質問です。

実際、代償期の眼瞼下垂が保険診療できないという地域もあると聞きます。これに対して反論します。 
 まず、人道的な見地から。非代償期の眼瞼下垂で苦しんでおられる患者さんには多くの薬剤を投与されていたり、人としての生活もできないほどの状態 の方が多くおられます。これらの方々は保険診療で手術を受けてはいけませんか?例えば、薬も効かない頭痛を治すのに多額の費用を出さなくてはいけません か? 
 次に医学的見地から。症状を伴う代償期の眼瞼下垂は下垂の程度が軽いから開いているのではなく、ミュラー筋という筋肉が交感神経の過剰な刺激を うけて眼瞼挙筋と瞼板を引き寄せている(これが代償の本質)から開いているのです。顔面の交感神経異常興奮を抑える治療として頚部交感神経ブロック(星状 神経節ブロック)がありますが、これを行うと副作用として明らかな眼瞼下垂になります。この眼瞼下垂の状態がその方の本来のまぶたの状態です。本当ならそ うして病的な自律神経の異常をとってから開き具合を計測すべきなのですが、頚部交感神経ブロックは検査のために行う程安易な手技ではありません。我々は丁 寧な問診と経験から代償されてわかりにくくなっている眼瞼下垂を診断しているのです。 
 逆にたいした症状もないのに手術をうけることは保険診療でないとしても、おすすめできることではありません。手術によって悪い症状がおきたり、外見的にも悪化するトラブルは決して少なくないのです。 

Q.眼瞼下垂の手術を受けたら眼瞼痙攣が出て余計に状態が悪くなった場合、治療できるのか?

A.受けた手術の種類によります。

ミュラータッキング手術が最も痙攣を引き起こしやすいです。あと、眼瞼下垂の手術をしながら単に埋没法重瞼だった場合もよく痙攣が起こります。糸がかかったミュラー筋にほぐす、切除するなどで改善する可能性はありますが、瘢痕(きずあとにできるコラーゲンのかたまり)次第では修正の効果が不十分なことがあります。また、糸が見つからない場合、あまりにも奥深くに糸がかかっている場合は修正できない=改善しないことも多いです。
 腱膜固定術は本来ならミュラー筋には糸がかからない手術です。ですが、ミュラー筋が普通ではない場所にも存在するケースがあり、また挙筋を前転した際にミュラー筋もある程度前転されるので、そのつもりがなくても糸がかかってしまうこともあります。これらは再手術でかなり効果が期待できます。
 何度も修正手術を受けている場合は瘢痕がひどく、それ以上の修正ができないことも多いです。
 もともと眼瞼痙攣があった上で手術を受けて悪化した場合、1回の修正では治まらないことも多く、その場合は上眼瞼以外に追加手術を行うこともあります。

 

「眼瞼下垂について」リンク

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